時計の針が進む音だけが部屋に響く。
沈黙は重く呼吸さえも慎重に
選ばなければならないように感じられる。
彼はグラスを持ち上げたが、唇に触れる直前で止まった。
視線の先にいる彼女の存在が、まるで見えない糸で心臓を縛りつける。
その糸は細いのに、切れることなく、確実に緊張を高めていく。
「言葉を発すれば、この空気は壊れてしまうのではないか」
そんな恐れが、喉元で言葉を凍らせる。
彼女の指がテーブルを軽く叩いた瞬間、
彼の心臓は跳ねた。
小さな音が、雷鳴のように響いたのだ。
その一瞬に、彼は自分がどれほど
彼女の存在に支配されているかを悟る。
視線を合わせるのすら
怖くなってきてしまう、、、、
だから彼は自分から
アイマスクを装着させて
もらうように悲願するのだ。
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